白い壁、横断歩道

図書館や大きな書店へ行くと、時たまやけに目を引く本に出会うことがあります。

読んでみると今の自分に必要だと思えるような内容であることが多いのです。

今回引き寄せられた本は、
「まっくらやみで見えたもの」光アレルギーのわたしの奇妙な人生
アンナ・リンジー著 真田由美子訳

この本はいつか読んでみようと思っていたところ、先日棚に並ぶ本の中でこの一冊が目に飛び込んできました。

33歳で突然、光線過敏症を発症し、それまで送っていた普通の生活から一転、闇の中での生活を送ることを余儀なくされた女性の手記です。
初まりはパソコンのディスプレイ。眺めていると段々と顔の皮膚がひりひりと灼けつくような痛みを感じるようになります。

痛みを例えて著者は「顔にガスバーナーを向けられているよう」と表現します。
やがてそれは広がっていき、生活の中のあらゆる光源に対して反応し始め、痛みも顔の皮膚から手足、そして全身に、服を着ていても生地を通過して光は痛みをもたらしていくようになります。
一度光に肌が反応してしまえば、肌が落ち着いて回復するまで数日以上かかります。
日光ですら身体が反応するようになり、彼女は徐々に自宅の一室に作った一筋の光すら通さない暗室に篭らざるをえなくなり、一年の大半をその暗室で過ごすことを余儀なくされます。

この本のジャンルは「闘病記」ということでしたが、中川には同じ一人の人間が、それまで生きてきた世界の価値観を抜け出し、変わらず同じ土地に生きながらも全く違う世界の中で自分の人生を創り上げていく冒険の記録のように思えます。

光線過敏を発症する以前、著者は国家公務員として目まぐるしい忙しさに充実感を感じながら生きていました。
発症した後もその社会的で生産的な生活に戻れないことへの苛立ちを感じます。

しかし、そうしたジレンマや症状の痛みに苦しみながらも、次第に制限された暗闇での生活の中に様々な彩りを見出していきます。
小康状態で少しだけ薄明かりの中へ戻れた時に出会う自然の美しさ。
彼女と共に生きる家族や周囲の人々の温かさ。
彼女の感覚は次第に鋭敏に、内面世界の豊かな感性へと花開いていきます。

人にはそれぞれにできることとできないことがあります。それは病気や障害とレッテルを貼られたものでなくとも大小様々であると思います。
できないことがあまりに社会への適応を阻むものであった場合、「障害」や「病気」とされ対処し補っていくことが求められます。

彼女の文章は、日々綱渡りのような細かい体調管理と試行錯誤の中で失いそうになる希望を手繰り寄せながら、詩情的なリズムと彩りで綴られています。
彼女は常に何かできることを探し出し、絶望に飲み込まれぬよう暗闇の中を探索します。
そして暗闇の中でも見えるものの存在に気づき始めます。
光の中にいては見落としてしまうような小さな希望の光も、真っ暗な中では眩くその存在を示してくれます。
まるで、街中で見上げる夜空と山の中で見上げる夜空では同じ空を見上げているはずですが、地上の光が少ない山の中の方がずっと星たちの存在を目の当たりにできるように。

ただ1日1日を「死」のゴールまでただ消費するのではなく、人にはそれぞれ果たすべき役割があると信じたいものです。
そういった目で彼女の本を読み解く時、現代の物質社会から無理やりシャットアウトされることで自然から外れすぎた私たち人間の生き方へ警鐘を鳴らす存在として考えることはできないでしょうか。

今、できていることも明日にはできる保証はない。
先のことは考えられない。
だからこそ「今、この瞬間」を愛おしみ、深く味わいながら生きていく。

自分の人生を冷静に精査し受け入れながら試行錯誤を繰り返していく。
それが「明らかに見る」ということなのかもしれません。
そうして初めて自分の前に道が開けていくのではないでしょうか。

本の最後はこの闘病が終わることで幕を下ろすことはなく、彼女の闘病は今もなお続いているとのこと。
この本の執筆の後には小説の執筆の予定もしている彼女に、本を読みながらたくさんの頷きと対話の中で、その生きるたくましさをお裾分けしてもらえたような気がしました。

ソマティカは本日も普段通り営業しております。
普段の清潔さへの配慮はそのままに、加えてサロン内のドアや手すりなど消毒を行っています。
それだけで部屋の中の空気が変わることを興味深く感じつつ。

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